『恐妻家クエスト ゴブリン討伐(1)』


□ ゴブリン討伐(1)

ゴブリンが近くにある洞窟に住処を作り、村を襲っている。
討伐してくれた方に3,000G差し上げます。
                             エルド村

割のいい商売だと思う。ゴブリン退治で3,000Gなんてめったにない。
『ゴブリンの薄笑いは血を凍らせ、高笑いは牛乳を酸敗させ、果実を木から落とす。 』
なんていわれてたのは御伽噺の中だけで、実際は醜いだけの下等モンスターだ。
3,000Gもあれば次の国に移動するだけの資金となるだろう。

ま、それだけゴブリンの襲来に困っているということだろう。

いまいるヘルティアには、近隣の村に軍隊を派遣するだけの力を持っていない。
去年、暗黒皇帝オーディス率いる帝国軍に侵攻され莫大な被害を被った。
とはいえ、主に戦ったのはエルメティアの魔法騎士団だが、戦場となったヘルティアにはしばらく草木も生えなかった。
帝国軍の魔法使いが使用する暗黒魔法は、人や植物はもちろん、土や石までも腐らせる。
使用する術者の性根も腐らせる、と私は思う。

侵略は魔法騎士団のおかげでなんとか食い止めることができたが、ヘルティアは緑溢れる国から荒れ果てた国と変貌した。
ヘルティア国軍は、焦土と化した土地の整備や、壊された街の建設などを主に行っている。

エルド村の立て札を見ていると、後ろから声がした。
「そんなの受けないから。」私の妻のヘレナだ。

「だけど見てみろよ。ゴブリン退治に3,000Gだぜ?相当困ってるんだよ、この人たち。」
「国が上乗せしてるから多くなってるだけよ。」

ヘルティア国の王、モルドフは共和国の同盟国に対して、傭兵を募った。
国軍が手一杯になっているため、各地で起きている反乱やモンスター討伐を行ってもらうためだ。
報奨金についても、依頼者に対して国からいくらか出ているため、通常よりも割り増しになることが多いため、共和国各国から傭兵が集まった。

「だけど、今ヘルティアは困った状・・・」
「しつこいわねっ。いやよゴブリンなんて、気持ち悪いじゃないっ」
そりゃ、見ていて気持ちのいいもんじゃないが・・・(;´Д`)。
こういう状況になったら言うことはひとつ。一人で行ってきなさいよ、だ。
「そんなに行きたければひとりで行って来なさいよ。」ほら、当たった。読みが当たったのにちっとも嬉しくない。_| ̄|○

困った。もう生活金も底を突きかけている。仕事もそんなに乱立しているわけじゃない。
仕事は国から依頼されるものと、直接依頼者と掛け合うものの二種類がある。このエルド村のゴブリン退治は国からの依頼だ。
国の傭兵監督所が仕事の依頼を受け、城の前の広場に依頼内容を記した立て札を立てる。
多いときには乱立する立て札だが、いまはこの一本しかない。

「だけどヘレナ、いま仕事はコレしかないんだから、請けるしかないだろう?それにもう、お金も付きかけているし。。。」
「あんたが皿洗いでもすればいいじゃない。」
( `_ゝ´)ムッ オレは皿洗いをするために剣士になったわけじゃないっ
と、言いそうになる気持ちを抑えて、私は考えた。どうすればこの依頼を受けることができるだろうか?

「・・・わかった。じゃあオレひとりで受けて仕事をしてくるから、宿で待っていてくれないか?」
「だめよ。」
ダメ?まだ何かあるのだろうか?私は身構えた。
「あんたひとりじゃ、まともに仕事ができるわけないじゃない。いいわ、付いていってあげるから。早く登録してきなさいよ。ほら。」

言い返したいことは山ほどあるが、グッとこらえて城へ歩を進める。
走れ、走らないと間に合わない、という罵声が後ろから聞こえたので、城まで走った。

一部始終を聞いていた城の兵士が、嘲りとも哀れみとも取れる笑いをこちらに向けていた。





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